今回は美容皮膚科の治療の一部門である
色素沈着、瘢痕(肥厚性瘢痕、陥凹変形)、ケロイド、外傷性刺青などに対する治療についてお話します。
では、色素沈着、瘢痕(肥厚性瘢痕、陥凹変形)、ケロイドは、どのような状況でおきるのでしょうか?
そうならないための予防法、おきてしまった場合の治療についても具体的に見ていきましょう。
1.にきびの場合:
にきびの炎症がひどい場合は、治療をせず放置すると、赤味がいつまでも続き、しみになってしまったり、皮膚のでこぼこが気になったりします。
予防:治りが悪い場合は、専門のクリニックで早めに治療を受けましょう。
治療:内容に応じて下記のような治療を単独、または複合して行います。
赤味→
イオン導入など
色素沈着(しみ)→
トレチノイン、ハイドロキノン治療(オバジニューダームシステム)、イオン導入
皮膚の肥厚性瘢痕(ケロイド)→
ステロイド局所注射やステロイド含有テープの貼付
陥凹変形→軽い変形の場合は、
ピーリングやトレチノイン治療などが効果的です。
2.かぶれなどの湿疹、虫刺され、アトピー性皮膚炎の場合:
かぶれ、湿疹、虫刺されにおいても、いつまでも治らずに長引くと、炎症後の色素沈着を起こします。
予防:早めに皮膚科を受診し、適切な治療を受けることが重要です。ステロイドなどで色素沈着をおこすと思っている方もおられますが、ステロイドで色素沈着をおこすのではなく、早めに適切な治療をしなかったのが原因でおきます。
治療:皮膚炎が落ち着いたのち、目立つ色素沈着に対しては、トレチノイン、ハイドロキノン治療などを行う場合もありますが、治療により再び湿疹を起こしてしまうこともあるため、
湿疹を繰り返さない事に注意し(原因となることをやめる、洗いすぎない、こすりすぎないなど)、経過を観察(wait and see)します。
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アトピー性皮膚炎などの慢性の湿疹の場合、繰り返し炎症がおき、掻破行動(かきむしる行動)を続けることで、皮膚が分厚くなったり粗造になったり、色素沈着や結節性痒疹(かゆみを伴う硬い結節)などができたりします。この場合も、
湿疹のコントロールを早めにつけること、症状を繰り返さないスキンケアを心がけることなどが重要になってきます。
治療:結節性痒疹の場合、
ステロイド局所注射やステロイドテープ貼付などを行います。
3.外傷(けが)の場合:
真皮深層(皮膚の深いところ)にまで損傷が及ぶと、瘢痕化しやすく、場合によってはケロイド状になってしまいます。
予防:このようにならないためにも、深い傷の場合は病院で洗浄、縫合処置をうけたり、医師の指導のもとに傷の治りを早める外用などを行うのがよいでしょう。
治療:瘢痕化した場合は、程度により、
修正手術(専門は形成外科)、ステロイドの局所注射やステロイドテープ貼付などを行います。
ケロイドの場合、ケロイド体質でない場合、部位によっては手術を行うこともありますが、多くの場合、
ステロイドの局所注射やステロイドテープ貼付、リザベンなどの内服を行います。
また、けがの際、砂などの異物が混入したままになると、
外傷性刺青(いれずみ)になります。外傷性刺青は、鉛筆の芯がささり、そのままになった場合にも起きることがあります。
予防:この場合も、けがした時にすぐに、病院で洗浄をし、異物を出来うる限り除去してもらうことが大切です。
治療:
QスイッチYAGレーザーなどのレーザー治療が効果的です。瘢痕を伴っている場合は、
瘢痕を修正する手術を行うことがあります。
4やけどの場合:
やけどした深さにより、色素沈着になったり、瘢痕化したり、ケロイド化したりします。
浅いやけどの場合:多くは2~3週で傷は治るのですが、その後赤味を経て、色素沈着をおこすことがあります。
深いやけどの場合:感染を伴ってしまった場合や、低温熱傷などで皮膚の深いところまで損傷が及ぶと、傷の治りに1か月~2か月近くかかり、場合によっては植皮術が必要になる場合があります。このような場合、傷が赤く盛り上がり、その後盛り上がった瘢痕になったり、ケロイド化することが多くみられます。また、傷の治りが悪く放置した場合、稀ではありますが、将来、皮膚癌になってしまうケースもあります。
予防:深いやけどの場合は、早めに皮膚科、形成外科を受診し、適切な治療を受けましょう。
治療:傷がなおった時点で、症状に応じて
ステロイドの局所注射やステロイドテープ貼付などを行います。また、活動期の場合(まだ赤く盛り上がっている時)、
サポーターや弾性ストッキングなどによる圧迫も有効です。
5.ケロイドの場合:
上記のようにけがのあと、手術のあとに、傷の深さや部位(好発部位は、前胸部、肩、陰部です)起きることもありますが、
本当のケロイド(真性ケロイド)は、虫刺されやにきびなどのちょっとしたきっかけ後におきます。傷痕が赤く盛り上がり、次第に広がり、かゆみや痛みをも伴います。このような場合は、ケロイドになりやすい体質(ケロイド体質)の方でよく見られます。
予防:ケロイド体質の方はケロイドになりやすいため、手術などを行う場合は注意が必要です。
治療:
ステロイドの局所注射、落ち着いてきたらステロイドテープ貼付をします。原則的には真性ケロイドの場合、切除術は行いません。何故なら、切除したところがまたケロイド化するためです。